オルソケラトロジー(ナイトレンズ)とは
オルソケラトロジーは、就寝中に専用のコンタクトレンズを装用して視力を改善させる新しい視力矯正治療の選択肢です。手術などは行うことなく、毎晩眠っている間に特殊なカーブを持つコンタクトレンズを装用しておくだけで角膜の形状が変化して、日中の裸眼視力が改善されます。そのため、比較的角膜が軟らかい若年層の方には特に有効とされている治療法です。 また2005年〜12年の報告1)-6)によると、オルソケラトロジーにより3〜5割の眼軸伸長抑制効果が期待できるとされ、近視進行予防にもオルソケラトロジーは有効と考えられます。 さらに、レーシックのようなやり直しが簡単ではない治療法とは異なり、治療を中止すれば角膜の形状が元の状態へと戻る低リスク性も特徴です。
- 1) Cho P, et al. The Longitudinal Orthokeratology Research in Children (LORIC) in Hong Kong: A pilot study on refractive changes and myopic control. Curr Eye Res 2005;30:71-80.
- 2) Walline JJ, et al. Corneal reshaping and myopic progression. Br J Ophthalmol 2009;93:1181-5.
- 3) Kakita T, et al. Influence of overnight orthokeratology on axial elongation in childhood myopia. Invest Ophthalmol Vis Sci 2011;52:2170-4.
- 4) Hiraoka Tet al. Long-term effect of overnight orthokeratology on axial length elongation in childhood myopia: A 5-year follow-up study. Invest Ophthalmol Vis Sci 2012;53:3913-9.
- 5) Santodomingo-RubidoJ, et al. Myopia control with orthokeratology contact lenses in Spain: Refraction and biometric changes. Invest Ophthalmol Vis Sci 2012;53:5060-5.
- 6) Cho P, et al. Retardation of myopia in orthokeratology (ROMIO) study: A 2-year randomized clinical trial. Invest Ophthalmol Vis Sci 2012;53:7077-85.
対象
- -1.00D〜-4.00D程度の中等度近視の方
- 乱視が軽度の方(直乱視:-1.75D以下、倒乱視:-0.75D以下)
- 海外産レンズでは-10.0Dまでの強度近視、-2.0Dまでの角膜乱視の方も矯正可能
治療の仕組み
オルソケラトロジーは、就寝前に専用のコンタクトレンズを装用しておくことで就寝中に角膜の形状が変化し、レンズを外した後の裸眼視力が改善される治療法です。変化した角膜の形状は一定時間保たれるので、日中を裸眼のままで過ごすことができるようになります。
1.レンズ装用前
近視をお持ちの方の裸眼は、外から入ってきた光が網膜に届く手前でピントを結んでしまうので、ものがぼやけて見えます。
2.就寝中(夜間)
専用のコンタクトレンズを装用した状態で就寝することで、眠っている間に角膜の形状がレンズの持つ特殊なカーブに沿って変化します。それにより、光のピントが網膜上で結ばれるように矯正され、裸眼時の視力が改善します。
3.起床後(日中)
専用のコンタクトレンズを外した後も角膜の形状は一定程度の時間保たれます。そのため、今までメガネなどによる矯正に頼ってきた日中を、視力が改善した裸眼のままで過ごすことができます。
当院での取り扱いレンズ
当院でのオルソケラトロジーでは
国産レンズ :① ブレスオーコレクト(TORAY社製)
海外産レンズ:② マイエメラルド(米国製)
③ アエリア(フランス製)
以上、3つのレンズを取り扱っております。
① ブレスオーコレクト(TORAY社製)
角膜を傷つけにくい高酸素透過性タイプ
目への負担をできるだけ抑えるために酸素透過性の高い素材で作られているので、就寝時の装用中も角膜に十分な酸素が供給されやすく安全です。
破損を防ぐやわらかい素材
衝撃が加わっても柔軟に曲がるやわらかい素材によって、不意の破損にも耐えやすく作られています。
日本人の角膜にフィットしやすいデザイン
日本人の角膜は比較的中央部の突出が少ないフラットな形状である場合が多いとされています。そのような角膜にフィットするようレンズのカップ部分を浅めにデザインすることで、レンズの過度な吸着を防ぎ、涙液がスムーズにレンズの裏側へと入り込むよう配慮された構造になっています。
厚生労働省の承認を得たレンズ
厚生労働省の承認によって品質が確保された高度管理医療機器に分類されています。
② マイエメラルド(米国製)
米国FDA・ヨーロッパCEマーク認可の長年世界各国で使用実績のあるレンズです。アジア各国でも長年の使用実績があり、国内でも複数の大学病院で臨床試験が行われ、日本人の角膜形状に対して効果と安全性が厚生労働省に認可されており、国内も取り扱い実績No.1のレンズになります。レンズ素材は高酸素透過性コンタクトレンズの世界的な代表製品Bostonシリーズ(ボシュロム社)を採用、角膜に優しいレンズです。
③ アエリア(フランス製)
このレンズは強度近視の患者様にも対応可能な幅広い度数があり、-5.25Dから-10.0Dまで対応しています。最先端医療の未承認品となります。
こんな方にお勧めです
若年層の方
まだ目が成長過程にある若年層の方は近視が進行しやすい反面、大人に比べて角膜が軟らかいので、オルソケラトロジーによる効果が特に現れやすいとされています。例えば近視の症状が現れ始めたばかりの若年層(小学生~高校生程度)の方におすすめです。
メガネやコンタクトレンズを日中に使用したくない・できない方
普段使用しているメガネやコンタクトレンズに不便さやわずらわしさを感じている方や、職業などの関係でどうしてもメガネの使用が不可能な方などにおすすめです。
裸眼でスポーツを楽しみたい方
スポーツを楽しむ際にメガネやコンタクトレンズによるストレスを感じることなく体を動かしたい方におすすめです。例えば水泳やサーフィンといったウォータースポーツもメガネなどを使わずに楽しむことができるようになります。
レーシック等の手術はできれば避けたい方
人体の中でもとりわけデリケートな目という部位に対する外科的手術には、怖さや失敗時のリスクなどを考えるとなかなか踏み出すことができないものです。オルソケラトロジーなら、治療の中止によって角膜の形状が元の状態へと戻るので安心です。
メリットとデメリット
メリット
- 手術不要
- 日中を裸眼で生活
- 治療を中止すれば元に戻る
デメリット
- 夜間は専用レンズで就寝
- ハロー・グレア※が生じることあり
- レンズの寿命が約2年で交換が必要
※ハロー:夜間に光がにじんで見える
グレア:光がまぶしく見える
予想される合併症
従来の昼間装用のハードコンタクトレンズと同じ合併症が起こる可能性があります。
- 角膜のキズ、炎症、浮腫、新生血管、内皮障害、感染症
- 角膜へのレンズの固着、レンズのズレ
- 結膜炎
- ハロー・グレア
治療の流れ
1お申し込み
お電話にてオルソケラトロジーによる治療をお受けになりたい旨をお伝えいただき、ご予約をお取りください。
ハードコンタクトレンズは2週間、ソフトコンタクトレンズは1週間装用をお休みして頂いてからご来院ください。
2適応検査・ご説明
視力検査、屈折検査、眼圧検査といった基本検査の他、角膜の状態などを検査することでオルソケラトロジーへの適応を確認いたします。
また、オルソケラトロジーの治療全般についてご説明いたします。その際、疑問点やご不安なことなどございましたら、お気軽におたずねください。なお未成年の方に対しては、安全にご使用頂くため、必ず保護者の同意書を頂いております。
3装用体験開始
適応に問題がないことが確認された方にはオルソケラトロジー用のコンタクトレンズの装用練習やケア方法のご説明を行った後、貸し出し用のテストレンズによる装用体験を開始していただきます。なお、開始後の翌日にもご来院いただき、再度適応確認のための検査を受けていただきます。
その際、預かり金として両眼40,000円(税込、オルソレンズ内金20,000円、装用体験代20,000円)、片眼20,000円(税込、オルソレンズ内金10,000円、装用体験代10,000円)をお預かり致しますのでご注意ください。正式なレンズの購入が決まりましたら、レンズ代金より差し引かせて頂きます。装用を開始されない場合にはお預かりのオルソレンズ代内金20,000円(片眼半額)を全額返却致します。
なお、開始後の1週間後にもご来院いただき、再度適応確認のための検査を受けていただきます。
4レンズ注文
1~2週間の装用体験後、改めて適応に問題がないことが確認されたら、正式なレンズを注文いたします。
5レンズ到着
ご注文のレンズが届き次第ご連絡を差し上げますので、受け取りにご来院ください。
6定期検査
正式なレンズによる治療開始後も角膜の状態や視力などを確認するために、定期検査を1週間後、1ヶ月後、3ヶ月後、そして以降は3ヶ月ごとに受けていただきます。治療を滞りなく進め、目の安全を確保するために必要なことですので、必ずご来院ください。また、定期検査以外の日でも、目に何らかの異常を感じた際にはすみやかにご来院ください。
7費用
初年度:190,000円(税込)
*片眼治療の場合、110,000円(税込)
*費用には、テストレンズ貸出代金、レンズ使用料、スターターキット、人工涙液点眼薬1本、定期検査費用が含まれております。
*2年目からは毎年定期検査費用として、下記費用が必要となります。
年間4回検査費用:16,000円(税込) 片眼の場合も同様です
レンズの更新(必要時):1枚 50,000円(税込)
(*2024年9月2日より価格改定済)
8保障
下記をご参照ください
国産レンズ
処方変更または破損の場合は1年以内2回まで無料で保証交換
海外産レンズ
処方変更の場合は3か月以内で1枚あたり1回無料で保証交換
破損の場合には6か月以内で1枚あたり1回無料で保証交換
紛失
全額患者様負担(片眼20,000円、税込)
9途中解約
治療プログラムですので、原則途中解約はできかねます。
やむを得ない理由による解約による返金(両眼)は、1か月以内に限り90,000円(税込)、それ以降の解約の返金はできかねます。片眼の場合には上記の2分の1となります。
オルソケラトロジーは、高度管理医療機器を使用する治療のため、クーリングオフ(契約解除)の適応外です。
10医療費控除
オルソケラトロジーの治療は眼鏡やコンタクトレンズのように視力矯正ではなく、治療です。したがって医療費控除の申請が可能です。購入時の領収書が必要になりますので、ご注意ください。